以心伝心の白河夜船へ。“小さなくまちゃん”のお話

“小さなくまちゃん” に心で語りかける。

それは明確な単語や言葉で構成されるわけでなく、

ただひたすらにあの、輝くような笑い顔を思うだけでよい。

弾けるような高音の、きゃっきゃうふふという声すら

聞こえてくるようではないか。


“小さなくまちゃん” は、この春小学校1年生になった。

かつては実に「生きるテディベア」のようだった、ころんとしていて

お腹がぽこんと飛び出たフォルムも

いつの間にか心持ちすっきりとしていて

いかにもお兄さんといった風情。


ある日の夜更けだ。


疲れがたまって

その疲労に手も足もでないほどに、

がんじがらめにされるがままに

真っ暗な部屋を、スマートフォンのぼうっとした灯りが照らして

はしゃぐ “小さなくまちゃん” が私を呼ぶ声を再生したら

夢のなかにまで持ち越すことができたみたいだった。


とろとろと始まったそれはいつか、白河夜船へとこぎだして

ひたすたらにしみじみと

幸福な気持ちで朝を迎えた。ありがとう、くまちゃん。


妹から来た短いメッセージに

「なんだか、まあちゃん。U子ちゃんの夢を見ていたみたいで

目覚めるなり、『U子ちゃん、すき』ってつぶやいていたよ」だって。


“小さなくまちゃん” の見た夢の世界が

彩りに満ちた幸せなものであったならと思った。


箱草子仮名手本。

泡沫のように浮かんではパチン、と消えていく。 その「束の間」にピンを指して標本にしてしまおう。

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