あたたかな雨、ピアノの調べ

新聞と珈琲。


あたたかい雨とピアノ。


ドーナツとミルク。


ふっと思いつくままに並べた、とっても相性のよい組み合わせのもの。


新聞もデジタルが派閥を拡大中だけれど、

私はあの大判の紙をゆっくり丹念に読み込むのを愛している。

拡げるだけ広げて、まずは

「さあ、どうしてやろうか」と言わんばかりに真上から見下ろし

飛び込んでくる見出しを吟味する瞬間。

ゆっくりと繰る紙ならではのひと時に、ブラックの珈琲がとてもよく合う。


できるなら5月まで、春先などはとてもいい。

凍えることのない気温の日に、やさしく洗うような雨音が絶え間ない。

床にぴったり耳をくっつけて、からっぽになっている心に

やさしく流れるようにうたうピアノの音はさらにさらにやさしい。

明るい空とあたたかな雨に

室内で過ごすことが上質に思えるピアノの調べにフィットするのは

なぜか断然紅茶だったりする。


母がドーナツを買うと、

「一体それは何人分なの?」というほどの量を買ってきたものだっけ。

ドーナツを家で食べるとき、選ぶのは絶対にミルク!

これだけは譲れない。どういうわけか、ミルク。

しかもその名もオールドファッションの、もっともプレーンで

クラシックなドーナツによく合う。


これら気に入りの組み合わせが

どうして気に入っているのかと言えばたぶん

思い出の追体験のような要素が加わっているんだと思う。


始まりは別の体験なり記憶が先行していて、

そこにきっといずれかの組み合わせが、私をさらに幸福にした。

あるいは悲しくさせた。

だから記憶に鮮明に残っていて

あのときめきを

あの傷みを

追体験するようにこれらの小さなことを

私は愛するのだろうと思う。


箱草子仮名手本。

泡沫のように浮かんではパチン、と消えていく。 その「束の間」にピンを指して標本にしてしまおう。

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