あたし、生まれ直したお誕生日におめでとう。

ふふふのふ、と。

今日は個人的な記念日です。

それは、私がもう一度生まれた日。

もう一度、生まれることを許された日です。


5時間だったか8時間だったかの手術を終えて

家族を想像できる最大の悲しみと不安の底に突き落として

私は生還しました。


全身麻酔が切れゆく、

夢うつつの世界で観た、たくさんの幻影のうち

忘れられない光景があります。


その日一滴も水を飲ませてもらえなくて、手術が終わった後も

ほんの少し口元をすすぐことは許されても飲水は許されずに

幻影のなかの私もひどく乾いていました。


さんざめく木漏れ日をかきわけかきわけ進むと

木立の合間に輝く小さな泉を見つけました。

ああ。

お水だ。

このうえなく美しい泉に吸い寄せられるようにふらふらと近寄っていき……

目が醒めたときのがっかり感も、よく覚えています。


こんなどうしようもない人間が、またこの世に還ってきてしまった。

このことの意味を忘れないように。


たくさんの過ち、

傷つけたたくさんの人々、

未熟。


第二の人生は、贖罪のために生きようと決めました。

第一の人生でしたすべての過ちや後悔を

できる限り改善するためにこの生を懸けようと。


いつも胸に問うて生きています。


生かしてくれたすべての人に、ことに、

報いる生を生きているか?と。


襟を正すように鏡のなかの目を見つめる。

恥じることのない生を

生きているのか?と。


私よ、生まれ直した誕生日におめでとう。

箱草子仮名手本。

泡沫のように浮かんではパチン、と消えていく。 その「束の間」にピンを指して標本にしてしまおう。

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