異邦人は真夜中に漂う

もう20年以上、繰り返し読んでいるサローヤン。

なんとなくなんちゃってサローヤン風に散文書いてみたくなりました。


photo by Wonderlane

深夜2時の部屋は

水槽のなかにいるような気分にさせる

白熱灯の灯りをごくごくかすかにしぼると

テレビ画面が放つ、極彩色の放射線が四角い部屋を縦横に走り

白い壁に投影されてゆらゆらとカーテンのようにそれは蠢く


まるでそこだけが世界だと、いわんばかりにそのなかに取り残されたようにして

さらに正確に記すならば、

膝小僧を抱え込んで、ひどく自分が弱い存在になってしまったかのように困惑し

うずくまりながら見るともなしに観るテレビの

音はもはや耳には届かないでいるのだった


不思議な高揚と膨大な疲労にのまれて

なぜか少し愉快な気分になっている

水槽のなかに漂っているような

そんな気持ちになってしまう


外は灼熱、時折ジジと鳴く蝉

カランと氷の解ける音

冷えすぎた体


いつも思う

夏なのにこの冷えすぎた体は一体

ゆらゆらと水槽のなかで漂いながら

どんどん自分を見失っていくような

そんな夜が更けてゆく


箱草子仮名手本。

泡沫のように浮かんではパチン、と消えていく。 その「束の間」にピンを指して標本にしてしまおう。

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